『世界一、受けたい虚○を。』

 たとえば、背中で消しゴムが転がっていなかったら、
 この恋は、始まってすら、いなかったかもしれない。

 ――3月。それは、別れの季節。

 第3学年への進級を間近に控えた会田忠助は
 このクラスでの、最後の、思い出づくりをしようとしていた。

 そうして、同じクラスの井上に、ひとつの質問を投げ掛ける。

 「井上、万人受けするウソってなんだと思う?」

 会田の質問を受けた、井上は答えた。

 「そんな、受けたいウソなんて、あるわけないじゃん」

 井上は、会田にウソをついていた。
 会田は、井上にウソをついていた。

 ウソとノートと消しゴムと、恋にまつわるたとえ話アレゴリー

『- Really, Another Imaginary. -』

 止まらない、気持ち。頭の中で、回り続ける恋景色。
 走り出そう、わたし。恋しちゃいましょう、我儘に。

 ――4月。それは、恋する季節。

 2年前の、ある春の日に、渡会綾瀬は、恋をした。
 1年前の、ある春の日に、渡会綾瀬は、決意した。

 渡会の、意中の相手は会田忠助。彼を呼び出し、告白をした。

 「わっ、わちゃしちょっ! ちょきっ、ちょきあってくだしあっ!」

 渡会の告白を受けた、会田は答えた。

 「ごめんなさい、渡会さん」

 ――そして、現在。渡会の中、くすぶり続ける恋の炎。
 渡会は1冊のノートを拾って、そうしてウソが、はじまった。

 ウソとノートと繰り返す、恋する乙女の初恋物語ラプソディー