冬のある日、工業系の専門学校に通う【 優 】はひとり、 駅のホームでベンチに寝転んでいた。
夜風が少し、いや、かなり、この吹きさらしのホームにおいては身体に堪える。
彼は電車が好きだった。人によってはただの鉄の塊にすぎないそれを、何よりも好んでいた。
冬のある日、工業系の専門学校に通う【麻 衣】はひとり、駅の改札をくぐってホームに着いた。
夜風が少し、麻衣が巻いていたマフラーと、穿いていたスカートの裾をはためかせた。
彼女は冬という季節が好きだった。とりわけ舞い降る雪を見上げるのが、彼女の心を落ち着かせた。
冬のある日、なんでもない、ただの一日の終わりに。
彼と彼女は、出会った。まるで、鉄道のレールが交わるみたいに。
分配された二つのレールが交わり、やがて一つになるように。
雪の降るように音もなく、物語が静かに始まりを告げた。
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