◆ ストーリー ◆


(――いつか見た、あの草原へ)


 ――1週間。
 それが俺に残された、この家での生活期間だ。
 1週間後に、俺は東京へと引越しをする。
 この家で過ごす、最後の1週間。


「……なのに、なんだって、おまえが一緒なんだ」

「え? うーん、と……遊びたいから、かな?」

「わかった、もういい……」

「うんっ、それじゃ、今日は何しようか? おにいちゃん♪」

「……はぁっ」


 上京を控えた兄と、そんなことはお構いなしの妹。
 やがて離れてしまうのならば、せめて微かな思い出を。

 とある場所、とある兄妹、とある物語。
 甘く、切なくも優しい、お別れの物語。


(僕らはずっと、あの広い草原で走っている)





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