//--------------------------------------------------------------- //『世界一、受けたい虚○を。』 // Copyright (C) 2016-18 3 on 10 -サンオントウ- // // ・「//」で始まる文章は、指定などのコメントアウト文です。 // // ・「/*コメントアウト*/」こちらもコメントアウト文です。 // // ・《漢字/かんじ》でルビを振ってあります。 // // ・【記号】「台詞」 //指定 で指定が付記してあります。 // //--------------------------------------------------------------- /*----登場人物(記号)説明--------------------------------------- 【会田】 …… 主人公。2年生。ヒロインと同じクラス。会田忠助。 【井上】 …… ヒロイン。2年生。主人公と同じクラス。井上。 【先生】 …… 主人公とヒロインの担任。涙もろい。 【ほか】 …… 主人公とヒロインの同級生。ノリがよい。 ------登場人物(記号)説明ここまで-----------------------------*/ //Chapter.1-1 受けたいウソ - Crack Me Up! - /*----シーン説明-------------------------------------------------  朝。ホームルーム前。主人公とヒロインは同じクラス。  主人公は、受けたいウソについて、必死になって考えていた。  だから主人公は、後ろの席のヒロインにウケるウソを訊ねた。  だって、女のひとはウソが好きだから。ヒロインは、怒った。 ------シーン説明ここまで----------------------------------------*/ //背景、教室(朝昼兼用)  ――8:35、ショートホームルーム前、開始 【井上】「はよー」 【会田】「おはよう(カリカリ)」 【井上】「あれ、なにしてんの。ちょい早めの、春休みの宿題?」 【会田】「万人受けするウソってなんだと思う」 【井上】「はあー?」 【会田】「万人受けするウソ、って。なんだと思う」 【井上】「聞こえてるけど。てか、なに。いきなり」 【会田】「万人受けする、ウソ、だ!」 【井上】「だ! じゃなくて。じゃなくて、え、なにそれ」 【会田】「なにそれ、じゃなくて。受けたいウソだよ。受けたいウソ」 【井上】「キホン、受けたくないんだけど、ウソ」 【会田】「だから。ウソ、受けたくないから。だから逆に、受けたいウソは、って話だよ」 【井上】「そんな、受けたいウソなんて、あるわけないじゃん」 【会田】「あるわけないじゃん、と……それってどんなウソなんだ?」 【井上】「いや、だから。ないってば。受けたいウソなんて、ないの」 【会田】「いやでも、だって。女のひとって、当たりさわりないウソとか好きじゃない?」 【井上】「ほー、たとえば?」 【会田】「たとえば『えー、デブ子マジ痩せてるよー!』とか。『きゃー、ブサ美ヤバいカワイイー!』とか」 【井上】「ウソじゃないけど。みんな本気で言ってんだけど」 【会田】「それこそウソだろ」 【井上】「ケンカ売ってんの」 【会田】「チョーウケるんですけど! キャハッ!」 【井上】「もう、知らない」 【会田】「まあそう言わず」 【井上】「言うけど。誰だって、バカにしてんの、って思うけど」 【会田】「女のひとが、みんな本気だってのは、わかった。だから、一緒に考えてほしい」 【井上】「考える、って……ウケるウソ、ってやつ?」 【会田】「そうだ、ウケたい。俺は、みんなが受けたいウソをついて、みんなにウケたい!」 【井上】「なんでまた、そんなこと」 【会田】「話せば、長くなるんだが」 【井上】「いいけど。べつに、話さなくていいけど。てか、もういい?」 //うんざりした様子で 【会田】「じゃあ、いっこだけ」 【井上】「なに」 【会田】「はい。デブ子の真似をします――『あー、痩せたい痩せたい(モグモグ)』」 【井上】「知らない」 【会田】「ウケると思って(モグモグ)」 //\SE(チャイム) 【井上】「ホームルーム、はじまるけど」 【会田】「じゃあ、またあとで(モグモグ)」 【井上】「やなこった(ペッペッ)」  ――8:40、ショートホームルーム前、終了。 //Chapter.1-2 わが師の恩 - Short Homeroom - /*----シーン説明-------------------------------------------------  朝のホームルーム。  主人公の名前   =会田  ヒロインの名前  =井上  その他クラスメイト=ノリのいいバカ ------シーン説明ここまで----------------------------------------*/ //背景、教室(朝昼兼用)  ――8:40、ショートホームルーム、開始。 【先生】「出欠を取ります――《会田/あいだ》」 【会田】「はい」 【先生】「《井上/いのうえ》」 【井上】「はーい」 【先生】「その他大勢」 【ほか】「イエーイ」 【先生】「じゃあみんな。今日はこの後、卒業式あるから。早く行ってね」 【ほか】「ウエーイ」 【先生】「あと、卒業式の後で、またホームルームするから。まだ帰んないでね」 【ほか】「ヘヘーイ」 【先生】「ところで、みんな――1年間。短い間だったけど、どうもありがとう」 【ほか】「ぜっ、《先生/ぜんぜべ》ええええっ、えべべべべええええぇぇっ!!」 【先生】「泣いてないで、早く行ってね」 【ほか】「ウエーイ」 【井上】「なんだこのクラス」 【会田】「楽しいなあ」  ――8:45、ショートホームルーム、終了。 //Chapter.1-3 仰げば尊し - Respect - /*----シーン説明-------------------------------------------------  卒業式の予行練習。  卒業生の担任でもないのに、主人公たちの担任が泣いていた。  突然、担任が泣き止んだ。ヒロインは、ウケた。 ------シーン説明ここまで----------------------------------------*/ //背景、体育館  ――8:55、卒業式予行練習、開始。 【井上】「てかさ。ウチら、べつに卒業じゃなくね」 【会田】「そうだよ(カリカリ)」 【井上】「だよね、まだ2年だし。先生だって、辞めるとかじゃなかったよね」 【会田】「だと思う(カリカリ)」 【井上】「だよねだよね。なのに、なに。さっきの、感動のお別れみたいなの」 【会田】「やりたかったんじゃないの、先生が(カリカリ)」 【井上】「のわりには、けっこーアッサリしてたけど、先生」 【会田】「やり切ったんじゃないの――っと。よし。できた」 【井上】「頑張んね、宿題」 【会田】「まあね、宿題じゃないけど」 【井上】「じゃあ、なに」 【ほか】「きりーつ」 //仰げば尊し、イントロ //ヒロイン立ち絵、立つ。Y方向+50〜100 【ほか】「仰げば尊し、斉唱――」 【会田】「あおー、げばー、とおー、としー」 【井上】「わがー、しのー、おんー」 【会田】「あっ! 見ろよ、ウチの担任泣いてるぞ!」 【井上】「やめなって、指差さないの!」 【会田】「いまー、こそー、わかー、れめー」 【井上】「いざー、さらー、あばー」 //仰げば尊し、2500ミリ秒フェードアウト //ヒロイン立ち絵、座る。Y方向-50〜100 【井上】「……ぷっ、ぷくくっ」 【会田】「笑ってんじゃん」 【井上】「だって、あれ、マジ泣きしてたんだもん。チョーウケる」 【会田】「いやあれ、たぶん、ウソ泣きだぜ」 【井上】「んなこと言っても、ぷっ、くくっ……」 【会田】「ツボってる……あ、先生泣き止んだ」 【井上】「くぷっ、ぷぷっ、くぷぷぷぷっ……!」 【会田】「年頃か。箸が転がってもおかしい年頃か」 【井上】「くぷぷぷぷっ……!」 【会田】「お年頃だなあ」  ――9:35、卒業式予行練習、終了。 //Chapter.1-4 贈る言葉 - Syncopation - /*----シーン説明-------------------------------------------------  シンコペーションは、なんだか卑猥。  人の口には戸は立てられず、主人公は、在校生代表で送辞を読んだ。 ------シーン説明ここまで---------------------------------------*/ //背景、体育館  ――10:00、卒業式、開始。 【ほか】「――卒業生、入場。みなさま、拍手でお迎えください」 //\SE(拍手) 【会田】「なんかさ」 【井上】「んー」 【会田】「なんか、こう。これだけ拍手で、まわりパチパチしてるとさ」 【井上】「なに」 【会田】「だから、こう。あえて、違うリズムで拍手したくならない?」 【井上】「ならない」 //\SE(拍手) //\SE2(拍手2シンコ) //拍手の裏拍でパチパチするように 【会田】「ほら、シンコペーション」 【井上】「やめなって」 【会田】「やってみなって、シンコペーション」 【井上】「やらないよ」 【会田】「ズンチャッ、ズンチャッ、ズズンズッチャッ」 【井上】「てかさ、シンコ――シンペコ……なに?」 【会田】「え、いまチンポッポチンポコって言った?」 //画面揺らす //\SE2(ビンタ) //ビンタが結果的に裏拍になる 【井上】「死ね!」 【会田】「ナイス! シンコペーション、ナイス!」 //\SE() //フェードで終了 【ほか】「――学校長、式辞」 【井上】「ああもう。くだらないこと言わないでよね」 【会田】「くだらないかなあ」 【井上】「くだらない。あの校長の式辞ぐらい、くだらない」 【会田】「ひどい。いま校長、めっちゃいいこと言ってるぞ」 【井上】「ふーん、どんな? ツイッタのトレンドに入る?」 【会田】「入る入る。ヤフーのトップにもガッツリ載る載る」 【井上】「わースゴい。相当いいこと言ってんねウチの校長」 【会田】「校長、絶好調」 【井上】「くだらない」 【会田】「こうちょう、ぜっこうちょう」 【井上】「ゆっくり言わなくていいから」 【会田】「でもほら、ツイッタのトレンドには」 【井上】「入らない」 【会田】「だったら、ヤフーのトップには」 【井上】「載らない」 【会田】「それでも、人の口には戸は」 【井上】「なにそれ?」 【会田】「人の口には、戸は」 【井上】「口に、戸?」 【会田】「そう。戸は」 【井上】「なに言ってんの。バカにしてんの」 【会田】「口にね。戸がね。こう、ちょっと立て付けが悪くて、開くとギギギって音とかするやつがね」 【井上】「口に戸なんてあるわけないじゃん」 【会田】「まあ、そうなんだけど。まさに、そういう《意味/こと》なんだけど」 【井上】「くだらないこと言わないでよね」 【会田】「くだらないかなあ」 【井上】「うん、くだらない」 【会田】「じゃあさ、なんかおもしろいこと言ってよ」 【井上】「いいよ」 【会田】「期待」 【井上】「これね、いまね、女子の間で流行ってんだけど」 【会田】「期待の嵐」 【井上】「もうね、ホント。バカみたいで。思わず、笑っちゃったんだけど」 【会田】「期待の大海原」 【ほか】「――在校生、送辞。在校生代表、2年1組、《会田/あいだ》《忠助/ただすけ》」 【会田】「はい」 【井上】「あれ、代表なんだ」 【会田】「そうだよ」 【井上】「あっ、もしかして。朝から書いてたのって、その原稿?」 【会田】「ううん。それはまた、べつ」 【井上】「えー、なんだよ。気になるじゃんよ」 【会田】「こっちだって気になってるよ、そっちのおもしろ小話を」 【井上】「もー、チョーウケるからね。マジでドッカンドッカンだから」 【会田】「期待の超新星爆発」 【井上】「てかさ、ほら。早く行きなよ。ガンバってね、代表」 【会田】「うん。行ってくる」 【井上】「らっしゃーい」 //\SE(拍手) //\SE.WA //\WA(1000) //少し待つ 【会田】「……送辞。2年1組、会田忠助」 【井上】「ひゅーひゅー」 【会田】「大雪に見舞われる冬も越え。春うららかなこの佳き日に、ご卒業されるご先輩方――」 【井上】「あは、ウケる」 【会田】「――ご卒業、誠におめでとうございます。在校生一同、心よりお祝い申し上げます」 【井上】「なんだよ、カッコいいじゃん。バーカ」  ――11:00、卒業式、終了。 //Chapter.1-5 見送る・られる - Destination - /*----シーン説明-------------------------------------------------  帰りのホームルーム。  先生が泣いていた理由は、飼い猫が家出をしたからだった。  井上は、人類として猫を愛すべきだと主張した。 ------シーン説明ここまで----------------------------------------*/ //背景、教室(朝昼兼用)  ――11:10、ショートホームルーム、開始。 【先生】「みんな。卒業式、お疲れ様」 【ほか】「ウエーイ」 【先生】「それから、会田。送辞お疲れ様。素晴らしかった」 【会田】「ありがとうございます」 【先生】「さすが生徒会長だな。先生も、実に鼻が高い」 【井上】「ねー、先生。式の練習中、なんで泣いてたの」 【先生】「それは、ちょっと、感極まって」 【井上】「それにしたって、涙もろすぎでしょ。なんで?」 【先生】「うん――実は、昨日から」 【井上】「昨日から?」 【先生】「猫が。先生の家の猫が、帰って来ないんだ」 【井上】「えっと……」 【先生】「なあ、井上。どこ行っちゃったのかな、猫は」 【会田】「先生。そろそろ、時間じゃないですか」 【先生】「会田。そうなんだ、時間になっても、帰ってこなかったんだよ、猫が」 【会田】「卒業生の。見送りの時間です。先生」 【先生】「……ああ、そうだった。みんな。これから、卒業生の見送りがあります」 【ほか】「ヘヘーイ」 【先生】「卒業生との最後の別れになるので、拍手で見送ってあげてください」 【その】「イエーイ」 //\SE(机とか椅子とかガタガタ) 【会田】「井上井上。廊下出よう。見送り見送り」 【井上】「会田……ごめん、助かった」 【会田】「え、なにが」 【井上】「わたしいま、ちょっと、泣きそうで」 【会田】「どうして」 【井上】「だって、猫だよ。泣く。それは泣く。うん、泣いていい。泣いていいよ、先生」 【会田】「泣いちゃ駄目だと思うよ。先生は大人なんだから」 【井上】「大人も、子どもも、関係ないよ。だって、猫だもん」 【会田】「井上が、猫を好きなのは、わかった」 【井上】「井上が、とかじゃないよ。人類として、当然のことだよ」 【会田】「それは、井上として?」 【井上】「ううん、人類として。アズアヒューマンビーング」 【会田】「でも俺。どっちかっていうと、犬派」 【井上】「じゃあ、会田は人外」 【会田】「井上、おまえのスマホのキャリアは」 【井上】「ソフトバンク」 【会田】「説得力皆無だなあ」  ――11:25、ショートホームルーム、終了。 //Chapter.1-6 ウケたいウソ - Strawberry, Chocolat, And Mint - /*----シーン説明-------------------------------------------------  卒業式の日の放課後。  主人公とヒロインは一緒に下校した。  帰りにアイスを買い食いしながら、万人受けするウソについて話す。  主人公とヒロインは、学年ごとのクラス替えを目の前に控えている。  クラス替えの前に、主人公はクラスメイトたちみんなに  ウソをついて、ウケたかった。という、ウソをついた。 ------シーン説明ここまで----------------------------------------*/ //背景、教室(朝昼兼用)  ――11:30、放課後、開始。 【井上】「ホームルーム終わったし、帰る?」 【会田】「うん、帰りたい」 【井上】「なら、帰ろうよ」 【会田】「井上、ちょっと聞いてくれ」 【井上】「なに」 【会田】「卒業式でさ、壇上にさ、花、あったじゃん」 【井上】「あったね」 【会田】「あれって、生花? それとも、造花? どっちだと思う」 【井上】「どっちでもいい。帰ろうよ」 【会田】「たぶん、生花だと思うんだよ。だって俺、いま超、鼻ムズムズしてるから」 【井上】「どーでもいい。帰ろうよ」 【会田】「履歴書の、特技の蘭に書けないかな。『生花か造花か、鼻ムズムズで見分けられます』って書けないかな」 【井上】「生徒会長、とだけ書いときゃいいよ。帰ろうよ」 【会田】「だって、インパクト欠けるじゃん、生徒会長って」 【井上】「欠けてないよ。充分だよ。およそ学生生活の中でインパクト上位にランクインだよ」 【会田】「いいや、ありふれている。だって、だいたいの学校に、必ず1人はいるわけじゃん」 【井上】「むしろ1人しかいないよ。だいたいの学校で学年ごとに1人しかいないよもう帰る」 【会田】「じゃあ今度は、井上の特技を考えよう。履歴書に書ける、インパクト高いやつを考えよう」 【井上】「え、いらないけど」 【会田】「そうだなあ……たとえば、マンホールの柄だけでどこの地域か見分けられます、ってのはどうだ」 【井上】「いらないってば。そういうの考えてるヒマあったら、どうやったら世界中から争いがなくなるか考えてよ」 【会田】「そうだなあ……さしずめ、世界中から、ウソがなくなったらいいんじゃないかなあ」 【井上】「会田、なに言ってんの?」 【会田】「井上、おなか減らない?」 【井上】「じゃあ、帰ろっか」 【会田】「そうだ、帰ろう。帰りの途中で、なんか買って食べよう」 【井上】「会田のオゴリね」 【会田】「オゴらないなあ」 【井上】「ケチ。テッテーコーセンの構えを取る」 //テッテーコーセン=徹底抗戦 【会田】「ウソだよ、オゴるよ」 【井上】「アイス。トリプルで」 【会田】「かくして、ウソがなくなって、世界は平和になりましたとさ」 //\SE(チーン) //暗転。背景黒 【井上】「えっとね、チョコと、ストロベリーと」 【会田】「ところで、井上」 【井上】「なに、会田」 【会田】「ダブルにならない?」 【井上】「3つめ、ミントね」 //軽いアイキャッチ、場転。 //背景、通学路、昼。 【井上】「――で?」 【会田】「で、とは」 【井上】「会田さ、なんか、話あったんじゃなかったっけ」 【会田】「うん。あるといえばあるし、ないといえばない」 【井上】「なにそれ」 【会田】「そうだなあ、なんだろうなあ。なんか、そういう気分の時ない?」 【井上】「あるわけないじゃん」 【会田】「想像してごらん。オゴらされた男の心情を」 【井上】「嬉しい嬉しい」 【会田】「オーソレミーヨ」 【井上】「ごめんごめん。だから、えっと。なんだっけ? ウソとかなんとか言ってたような」 【会田】「万人受けするウソ、だ」 【井上】「そう、それ。その話。ウケたいとか、ウケたくないとか、そういう話」 【会田】「え、井上。もしかして、聞いてくれるの?」 【井上】「聞いてあげないこともない」 【会田】「期待の天地開闢」 【井上】「聞くよ。まあ、アイス食べ終わるまでだったらね」 【会田】「やった。でも、こういうのはさ。急に、ってのは。ほら、会話の流れとかあるじゃない」 【井上】「早くしないと、食べ終わるかも(もぐもぐ)」 【会田】「で、万人受けするウソの話なんだけど」 【井上】「オッケー」 //BGM変える 【会田】「井上さ、なんか、いま時点で受けたいウソってあったりする?」 【井上】「ウケたいウソ?」 【会田】「受けたいウソ」 【井上】「うーん……あ、サンタクロースとか? あれって、ウソでも嬉しいじゃん」 【会田】「お、いいね。良い良い。そうそう、そういうの。そういうのもっとちょうだい」 【井上】「そんなこと言っても(もぐもぐ)。そんなに、思いつかないけど(もぐもぐ)」 【会田】「もぐもぐしてないでさ。さあ、もっと。もっとだ。もっとちょうだいギブミー」 【井上】「はい、あーん」 【会田】「モグモグ……ハミガキ粉の味がする」 【井上】「もうあげない(もぐもぐ)」 【会田】「ミントじゃなくて、ウソをちょうだいテルミー」 【井上】「んでも、サンタクロース以外でしょ……んー、と。コウノトリとか?」 【会田】「子どもを運ぶ、コウノトリのウソ。サンタと同じパターンだな」 【井上】「なにそれ感じわるぅ。同じってなにさ。せっかく考えたげてんのに」 【会田】「だって。サンタも、コウノトリも、どっちも運ぶ系だろう」 【井上】「そうだけど。いいじゃん、運んでもらいたいじゃん」 【会田】「井上、よく使う宅配便は」 【井上】「クロネコヤマト」 【会田】「説得力抜群だなあ」 【井上】「送った時も、受け取った時も、クロネコポイント貯まるんだ」 【会田】「運ぶ系。幸せ運ぶ、みんな喜ぶ甘いウソ。アイスでいうと、ストロベリー」 【井上】「ストロベリー。他にもいくつかパティーンがあるの?」 【会田】「そうだな。あとは、謙譲系」 【井上】「ケンジョー」 【会田】「たとえば、つまらないものですが、とか。またの機会に、とか」 【井上】「なるー。ちょっぴりオトナな気づかいのやつね」 【会田】「さよう。コクのあるウソ。アイスでいうと、チョコレート」 【井上】「それじゃあミントは? アイスでいうと、ミントのウソは?」 【会田】「ミントのウソは、商業系」 【井上】「ショーギョー」 【会田】「そう。刺激的なウソ。基本プレイ無料、とか。クチコミNo.1、とか」 【井上】「ビミョーじゃない? そういうのはさ、ウソじゃないよね。みんなホントのことだよね」 【会田】「クチコミNo.1の化粧品を塗った唇でなにを言う」 【井上】「ホントのことだもん。このリップだって、みんないいって言ってるし」 【会田】「これがホントのリップサービス」 【井上】「くだらないこと言わないでよね」 【会田】「くだらないかなあ」 【井上】「んー、でも。結局、これってなんなの。会田はどうして、そんなん考えてたんだっけ」 【会田】「そうか、知りたいか」 【井上】「やー、べつに?(もぐもぐ)」 【会田】「知りたいんだな。朝にも1回言ったけど、そんなに知りたきゃ、もっかい言うぞ」 【井上】「えー、べつに。てか、言ってたっけ。覚えてない(もぐもぐ)」 【会田】「泣いちゃう。俺、もう泣いちゃう。ぐすん、ぐすすん」 【井上】「めんどくさいなあ。言いたかったら、言ってもいいよ(もぐもぐ)」 【会田】「ホント? ホントに、言ってもいい? ウソじゃない?」 【井上】「ウソじゃないから。ほら、言いなって。優しいわたしは聞いててあげるよ(もぐもぐ)」 【会田】「うん、言う。俺は――」 【井上】「あ、ちょい待ち」 【会田】「いいところ。俺いま、超、いいところ!」 【井上】「アイス、食べ終わっちった。めんちゃい」 【会田】「言わせてお願い」 【井上】「またの機会に」 【会田】「ご注文はチョコレート追加でよろしいでしょうか」 【井上】「んー、や。アイスはもういいや。なんか、あったかいやつがいい」 【会田】「あったか系か。あったかポカポカするやつか」 【井上】「そういえば。なんか、そういう。あったかいパティーンのウソってないの」 【会田】「あるぞ、もちろん」 【井上】「じゃあ、それ。そっちだったら、聞いたげる」 【会田】「そうだな。たとえば、泣いた赤鬼とか。あとは、ごんぎつねとか」 【井上】「あー、わかる。ぽい。それっぽい」 【会田】「あったかウソは、包容力。アイスでいうと、雪見だいふく」 【井上】「優しいね。包まれてる感じ、スゴくする」 【会田】「だから、俺も。みんなが受けたいウソをついて、それで、みんなにウケたいな、って」 【井上】「あ、それが理由なの?」 【会田】「うん。だってもうすぐ、クラスのみんなとお別れだし。離れ離れになる前に、って」 【井上】「あー、そうねえ。クラス替えねえ」 【会田】「そう。だから、みんなとお別れする前にさ。気の利いた、ウソでもひとつ、つけないかなって」 【井上】「なるほどねえ。でもさ、それって、ウソじゃなきゃダメなの?」 【会田】「ダメ、って。なんで?」 【井上】「だってさ、ほら。たとえばさ、卒業式の送辞みたいに。ホントのことでいいじゃない」 【会田】「まあそうなんだけど、そうじゃなくて。ウソっていうか、ギャグっていうか、なんていうか」 【井上】「テウイカ、テウイカ。テウイカ、なんなの」 //テウイカ=ていうか 【会田】「だからさ、あれだよ。そう、あれだ。みんなとは、笑ってお別れしたいじゃん」 //じゃん? みたいに、語尾上げで。 【井上】「それじゃあウソっていうよりも、よーするに、みんなを笑かしたいってこと?」 【会田】「まあ、そうなる。のかな。井上は、相変わらず説明が上手だ」 【井上】「そりゃどーも。ふーん。ま、よいんじゃない」 【会田】「そうかな、よいかな」 【井上】「うん。よいよい。ウチのクラス、なんか引くほどノリがいいから。チョーウケてくれるよ、きっと」 【会田】「そうか。よかった」 【井上】「うん、よかったね」 【会田】「それじゃあ井上、よかったついでに俺にぜひとも、ウケたいウソを伝授してくれ」  ――俺は。ひとつ、ウソをつきました。 【井上】「でも。アイスもう、ないけど」 【会田】「あったかいのをオゴるから」 【井上】「えー、べつにいい、テウイカ。なんか、もーしゃけない、テウイカ」 //@テウイカ=っていうか Aもーしゃけない=申し訳ない 【会田】「テウイカテウイカ、なんなんだ。俺と一緒にウケたいウソを。考えてくれるのか、くれないのか」 【井上】「んー、や。てかさ、なんてかさ……会田は、さ」 【会田】「俺は?」 【井上】「ん、んー、んんー……なんでもない」  ――わたしは。ひとつ、ウソをつきました。 【会田】「ヘタか。なんかあるだろう。話せ、さあ話せ。ウケたいウソを、俺にくれ」 【井上】「会田の、そういうデリカシーないとこ、だいっキラい」 【会田】「――っていうウソか。ウケないぞ」 【井上】「死ね! 帰る!」  ――13:30、放課後、終了。